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New York Psychologist's Life

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Robbers洞窟実験:グループ間の紛争と協力

Robbers洞窟実験:グループ間の紛争と協力_d0004292_13235423.jpg今日は一日中、部屋で勉強をしていた。科目は「組織の心理的側面(Psychological Aspect of Organization)」だ。

                               写真:Shenandoh自然公園の山荘

この科目の授業自体はそれほど大変ではないのだが、テキストに社会心理学の用語や、抽象的な概念が沢山出てくるので、内容を読み込んで理解するまでに、時間がかかってしまう。

各章ごとに設問があって、今回は全部で40問ある。試験に向けてクラスメート4人でスタディグループを組んで作業分担することにした。今日がグループ内での解答作成の締め切りだったので必死になって終えた。終わったのは朝の4時。

テキストでは、各章ごとに心理学者の論文が紹介されている。中でも、Sherif(1961)の「Robbers洞窟実験」はなかなか興味深かった。この実験は、1961年に11歳から12歳の少年22人を集めて、Robbers Cave State Parkという自然公園で行われたものである。ボーイスカウトの少年たちが2チームに分かれてキャンプを行い、実験者はグループ同士の関係やメンバーの行動の変化について調べるという実験である。

この実験には3つのステージがある。
ステージ1:グループ形成期
ステージ2:グループ間関係の発生(競争状態での接触)
ステージ3:緊張の緩和

ますはステージ1ではグループが作られる。お互いに同じ問題を共有し、同じ信条を分かち合い、行動を共にすることによってグループの結束が固まっていく。

ステージ2では、2つのグループが野球のゲームをし、トロフィーを争うトーナメントに参加する。競争関係に置かれることによって、グループ内のメンバーの連帯意識と協力関係がさらに強まっていく。またそれと同時に、グループ外のメンバーに対するネガティブなイメージが形成され、グループ外のメンバーに対する攻撃的な行動が発生する。

ステージ3では、一緒に映画を見たり、同じ場所で一緒にご飯を食べることでグループ同士の相互接触を増やす。次に、2つのグループに共通のゴール(課題)が与えられる。この課題は2つのグループが協力することによって始めて達成できるものである。各グループのメンバーは共通の課題を達成するために、自然にお互い協力し合うようになる。

この実験の結果、グループ間の緊張を緩和するためには、接触の回数を増やすことよりも、共通のゴールを持って同じ目的に向けて協力する方が、より効果が高いということが分かった。

***

ここまで学んだところで、ふと反日感情の高まる中国の現状が思い浮かんだ。現在、中国の反日派にとって日本は、いわば「共通の敵」となっている。これはそもそも中国の徹底した反日教育によるものである。

中国は、外部に国民共通の敵を作り、「反日」という共通の”ゴール”を標榜することによって、経済格差が広がる国内の複数のグループを一つにまとめるという政治的なメリットを享受しているのではないか。

つまり中国は国内のグループに対してSherifのステージ3(緊張の緩和)の理論を適用していることになる。国民に共通のゴールを設定することで、国内の異なるグループの協力を促しているのである。

また中国と日本の国家間の関係を考えると、競争状態にあり、国民の一部で相手の国に対する攻撃的な感情が発生していることから、Sherifの理論のステージ2(競争状態での接触)の段階にあると言えるだろう。

国の指導者の政治的な思惑で情報操作が行われ、国民が正しい判断力を失って扇動されてしまうことは悲しいことである。お互いに相手に嫌がらせをしたところで、嫌悪感が高まるだけで、生み出されるものは何もないだろう。

逆に、中国と日本が今後、協力していくためにはどうすれば良いのか。Sherifの理論を参考にするならば、「共通のゴールを作る」ことである。

日韓共催サッカーのような共催イベントを行うこと、共同出資の会社を作って経営することなどいろいろ考えられる。宇宙人に侵略してもらって、地球軍として一緒に戦うなんていうのもいいかもしれない。(・・・冗談です。)

中国の問題で調べていて幾つか面白いブログがあったので、参考までに載せておきます。

「反日感情・・・いったい何が正しくて何が正しくないのか?」
http://www.kei-jp.net/mt/archives/2005/04/post_30.html

「差別を引き起こす人間心理」
http://blogpal.seesaa.net/article/3124870.html

「日本側がイニシアティブをとった首相演説での謝罪表明」
http://blog.so-net.ne.jp/la3751/2005-04-23
by hicello | 2005-04-29 05:54 | 組織心理学
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