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New York Psychologist's Life

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ニューヨークの光と影

留学してから、日本やアメリカについて考える機会が増えました。どちらの国も良い面、悪い面はありますが、実際にニューヨークに暮らしてみると、日本はやはり恵まれた住みやすい国なのだとつくづく感じます。

日本のメディアではアメリカのウォールストリートや観光地など、華やかなニューヨークの街の様子ばかりが伝えられていますが、この街は、実は華やかさと同時に暗い影の部分を沢山抱えています。

都市の中心部から電車で30分ほど移動してハーレムに行くと、低所得層の人たちの街が広がっています。さらに奥に行くと建物はますます殺風景になり、まるで別の国に来たかのような変わり様です。ニューヨーク市内のハーレムやブロンクスなどの地域には、仕事もなく毎日の食べ物も満足に得られない人たちが多く住んでいます。

Food Bank for New York Cityという非営利組織の2005年の統計によると、NY市内の3分の1の人が日々の食費を得るのも困難な状況にあるそうです。そのためか、大学からも時々、Food Driveと呼ばれるボランティア募集や募金のお知らせが送られてきたりします。

ジュリアーニ市長の政策で、数年前よりニューヨークの治安は大分良くなったそうですが、依然として昼間でも近寄らない方がいいと言われる地域も残っています。私の住んでいるところはハーレムのすぐ近くのモーニングサイドハイツという地域にありますが、人通りが多く安全に思われる寮の周りでも、夜中に銃を突きつけられてお金を要求されたという学生の話を耳にすることもあるので、油断はできません。

ニューヨーク市内でも、それぞれの人種・民族が共生しつつ、お互いに境界線を持っているようです。例えば、アッパーイーストなどの高級住宅地にはユダヤ人が多く住み、クイーンズにはギリシャやアジア人など移民のコミュニティがあり、ハーレムやブロンクスには黒人が住むといったようにエリアによって住み分けています。ハーレムやブロンクスでは、道を歩いている人もヒスパニックか黒人が多いので、白人やアジア人が歩いていると目立ちます。

ニューヨークの路上や地下鉄の電車の中では、物乞いをしている浮浪者の姿をよく見かけます。あるときは道端でおばあさんに話しかけられて、道を聞かれるのかと思ったら、「お腹がすいているので、少しでいいからお金を恵んでください。」と、突然涙を流しながら訴えられることもありました。日本では、浮浪者が直接に歩行者に話しかけて物乞いをすることはまずないので、驚いてしまいました。

人種によって社会階層も明確に分かれています。例えば、清掃員のおじさん、駅で新聞を配っている人、運転手、修理工などの職業には黒人が多く、ホワイトカラーの職業は圧倒的に白人が多いです。

実際、クラスメートは圧倒的に白人が多く、黒人・ヒスパニックの生徒は数えるほどしかいません。アメリカの人口に占める黒人の割合が13%、ヒスパニックの割合が13%であることを考えると、クラスにいる有色人種は実際の人口に占める割合の半分以下であり、とても少ないことが分かります。

人種の話になったときに、あるアメリカ人の男性が言っていました。

「私たち白人も黒人のことは深い部分までは良く知らないし、彼らも白人のことは理解していないと思うよ。」

アメリカに住むまでは、アメリカは人種間の平等を実現している国なのだと思っていましたが、実際にはまだ人種・民族の共生を実現する途中の段階にあるようです。

日本に住んでいたときは、人種・宗教・民族の違いを意識せずに生活していました。日本は同じ人種・民族のバックグラウンドを持つ人たちが大半を占め、似たような思考回路を共有しているので、多くの人数が集まっても暗黙の了解で比較的楽に物事を進めることができます。宗教の信仰も緩やかなものであるためか、宗教上の対立なども特に顕著なものは見られません。

それに対しニューヨークでは、人の外見から考え方までそれぞれ大きく違っているので、常に違いを意識して生活しなければなりません。日本人同士ならお互いに何も言わなくても通じている当たり前のことを、こちらでは一つずつ説明しなければならないことが多いような気がします。

日本でも、これから人口が減少して移民が多く住むようになったら、人種問題や生活格差、異文化摩擦など、アメリカと同じような問題に直面することがあるのかもしれません。自分は今までとても幸せな環境の中にいたのだと、外国に住んでみて初めて気がつくことができました。
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by hicello | 2006-02-21 14:10 | 組織心理学
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